誰が”ROCK STAR”か?
ロックバンドACE OF SPADESに関する幻覚を3万文字分延々と連ねた謎の長文(https://asahi771.hatenablog.com/entry/2019/10/11/191910?_ga=2.52482088.1815978842.1571734854-1939229228.1570718126)を書いた時、リリースが予告されていた(2019年10月11日時点)TAKAHIROの配信シングル「YOU are ROCK STAR」について、わずかに触れた。
投稿後、「楽曲を聴かずに何かを語るのは不誠実ではないか」と思ったので、配信された曲を聴いて、思ったところを少しだけ追記した。
これで私の幻覚のすべては書き切った。認知の正しさはさて置いても、私が言語化できることは全部記したし、これ以上喋ることはない。私の“夏”は終わった、と、一区切りつけた。
筈だった。
2019年10月20日、TAKAHIROのLINE LIVEを観るまでは、である。
TAKAHIRO:僕のロックスターは誰なのか。
具体的なロックスターを想定して作られているのマジ!?(スペースキャット)
「YOU are ROCK STAR」という楽曲にEXILE TAKAHIROのロックンロールを感じていた私にとって、由々しき事態である。解釈を根本から練り直さなければならない。
全然すべてを書き切ってなんかいなかった。
私の想像の及ばない鉱脈がそこにはあった。
勝手に終わらせて満足している場合じゃねえ。
というわけで、動揺のままにEXILE TAKAHIRO「YOU are ROCK STAR」について考えていくだけのエントリーです。
ACE OF SPADESに関して書いたエントリーの中で、私は構成を「私の見たACE OF SPADESの物語」と「ACE OF SPADESを見た私の物語」に大別しましたが、今回のエントリーはどちらでもありません。
言うなれば、「YOU are ROCK STARをどうにか物語として理解しようと足掻く私の脳内垂れ流しメモ帳」です。
一節 YOU=俺=TAKAHIRO説
まず、配信された後の私の感想を振り返ってみる。
(10月16日追記)
「YOU are ROCK STAR」が配信されたので。
印象的な重いギターリフに、サビで甲高く鳴り響くシンセの音。彼のルーツとする全てを孕みながら、そのどれとも似通ってはいない、EXILE TAKAHIROによる、EXILE TAKAHIROのための、EXILE TAKAHIROのロックンロールがそこにあった。
彼がかつて焦がれた”ROCK STAR”の魂は、ACE OF SPADESを経た2019年10月、確かにTAKAHIROの中に、彼自身のものとして宿っている。
(追記ここまで)
なんか言ってらあ。
この通り、私は「YOU are ROCK STAR」を聴いて、EXILE TAKAHIROがEXILE TAKAHIROとして固有のロックスタイルを確立させたのだと感じ、そのことを喜ばしいと思った。
TAKAHIROが聴いてきたのであろう90年代のロックを思わせるサウンドでありながら、サビではキャッチーなシンセが鳴り、EXILE的な、ポップス的な色も確かに伺うことができる。
EXILE TAKAHIROがソロとして歌った初めてのロックは、「GLORIA」、ZIGGYのカバーであった。二曲目は、「Irish Blue」。これがTAKAHIROの「GLAYのような楽曲を歌いたい」という思いからTAKUROによって生み出されたものであることは、インタビューでも語られている。
TAKAHIRO:TAKUROさんの作る『グロリアス』や『BELOVED』のような、GLAYさんのキャッチーなメロディが大好きなんです。そんな曲を自分の声で歌いたくて、今回お願いさせていただいたんですが、TAKUROさんも「かわいい弟のために頑張るよ」と快く引き受けてくださいました。
(Mens JOKER「新作ミニアルバムの制作秘話や2018年に再始動するEXILEの活動への思いをたっぷり語るEXILE TAKAHIRO インタビューWEB特別版」、2017年12月20日付)
そして2019年、EXILE TAKAHIROが満を持して放ったロックンロールは、カバー曲でも、GLAYのTAKUROの提供曲でもない、TAKAHIROが木島靖夫と共に作曲し、自ら作詞を手掛けた「YOU are ROCK STAR」である。
それを私は素晴らしいことだと思ったし、そのような楽曲を生み出せるTAKAHIROというミュージシャンについて、凄いなぁと思った。
二節 ”僕のロックスター”は誰なのか
リリースから4日後、2019年10月20日、「EXILE TAKAHIROリリース記念LINE LIVE」が配信された。
番組内でTAKAHIROは「YOU are ROCK STAR」について、このような発言をした。
TAKAHIRO:このタイトルの意味はですね、そのまま、「YOU are ROCK STAR」。これには、ちょっとこう、実は、逸話というか、まあ、まだ話していない秘密があるんですけど。まあこれクイズ形式じゃないんですけど(笑)。
あのー、「YOU are ROCK STAR」、そのままですよ。“誰に向けて書いてる”のか。……これね、まだお話ししたことがないです。「TAKAHIRO道の駅」でも話したこともないですし。先日、ようやくあのー、身近なスタッフの人たちにも、ようやく話したくらいで。まあ勿論、知ってる人はいないと思います。はい。
だから、誰に宛てて、僕のロックスターは誰なのか。まあこれをあの、コメントでも、ね、クイズ形式じゃないんですけど、当てていただければありがたいなと思うんですけど。難しいですよ。(中略)
でも結構正直言うと当たってる人多いです。これ歌詞の意味をね、今一度こう、紐解きながら、聴いていただけると、大体、わかっていただけるかなと、思います。
……。
……。
……!?
“誰かに向けて書いてる”んですか!?
“誰”に!?
「YOU are ROCK STAR」のEXILE TAKAHIRO性に着目していた私の中に、この楽曲が具体的な誰かに宛てて書かれたものであるという発想は全くなかったので、それはもう驚いた。
放送開始から10分足らずで顎が外れるほどにあんぐりと口を開き、しかも、TAKAHIRO氏が結局答えを言わずに終わったものだから、顎を戻すタイミングまで失った。
まだ口は閉じていない。
……まあ、配信を見ていた人ならおそらく大体がそうであったように、想像はできる。
というか、答えはひとつしかないだろう。
GLAYである。(わざわざ改行してまで強調する意味、ある?)
明言されていない以上、元職場の美容室の同僚達である可能性も、THE ALFEEである可能性もあるが、まあ、GLAYでしょう。多分。
それを踏まえて歌詞を見ていくと、なるほど、と思うところはある。
「誘惑」のメロディーに
その「鼓動」を響かせ
芽生えた「生きがい」に
これらは言うまでもなくGLAYの名曲のタイトルである。或いは、「Dreamer」「牙」「果てなく」「Soul」あたりもそうかもしれない。
そして、補強する材料というならば、リリース前からその情報は我々の眼前に公開されていた。
GLAYの25周年に際して発行された、2019年7月発売のムック本『GLAY DEMOCRACY 25TH BOOK』に寄稿されたTAKAHIROのコメントである。
僕の人生はGLAYの曲と共にあると言っても過言ではありません。
まさに僕にとって“ROCK STAR”です!!
……なるほどね?
三節 誰が“ROCK STAR”か?
EXILE TAKAHIROの“ROCK STAR”はGLAYであり、「YOU are ROCK STAR」はGLAYに向けて書かれた楽曲である、と仮定する(どんなに真実味が高くても、明言されていない以上は、我々は仮定するしかない)。
それでも、その上で、私は私のために、私の感じたものを明らかにするために、悪足掻きとして「YOU are ROCK STAR」とは何のことなのか、“ROCK STAR”とは誰なのか、考えていきたい。
ZIGGYのカバー曲である「GLORIA」、そしてGLAY TAKUROの提供曲である「Irish Blue」を経た、EXILE TAKAHIROが自ら曲を書いたオリジナルのロック、「YOU are ROCK STAR」。
TAKAHIROの音楽的ルーツの主要な位置をGLAYが占めていることは、ACE OF SPADESのインタビューでも述べられている。
TAKAHIRO:まずギターのコードとメロディを考えたんですけど、恥ずかしい話、どうしてもGLAYさんっぽくなってしまって(笑)。(中略)作ってるときに「あれ? こういう曲、GLAYさんになかったっけ?」と思って、アルバムを聴き直したり(笑)。10代のときからずっと聴いているし、ファンなので。勝手にそうなってしまうというか。
(Real Sound「 TAKAHIRO×HISASHIが語る、ACE OF SPADESの軌跡「メンバーの結束も強くなった」」、2019年3月9日付)
“自然と気持ちいいように作曲をするとGLAYっぽくなる”というTAKAHIROの発言は、随所に見られる。
それに従えば、EXILE TAKAHIROがEXILE TAKAHIROとして一からロックを作ろうと思った時、それがGLAYを思わせる楽曲になるのは、自然なことである、と言える。
そこで効いてくるのが、「YOU are ROCK STAR」の共作曲者である木島靖夫の存在である。
TAKAHIRO:最初に木島さんに、楽曲のテーマとなるギターのリフを考えていただいた上で、素敵なコードを作っていただいて。そこに、自分がメロディーと、そして歌詞を乗っけて。
と語られているように、「YOU are ROCK STAR」のコード進行は木島靖夫の手によるものである。
ところで、TAKAHIROのコードに関する価値観がわかる発言の中に、興味深いものがある。
2019年5月9日にLDH TV内で配信された、「『僕に、会いたかった』映画公開記念~TAKAHIRO×秋山真太郎スペシャルトーク~part.2」である。
TAKAHIRO:逆に言うとインストだけって、メロディ乗っけなければインストだけにはなるけど、インストはインストなりの作り方って、絶対的に出てくるから。
秋山:いや聴いてみたいなと思って。単純に。俺インスト好きで。(中略)インストってその中でめっちゃ展開してるわけよ。いい曲って。
TAKAHIRO:そう、展開が結構大切になるんで。メロ、歌モノって、俺が特に好きなのは、案外、オケに、そこまでの展開がないものに、メロと歌詞でめちゃくちゃ展開つけていくっていうのが多くて。だから曲だけ聴くと案外訥々としている、っていう。中に、歌が引き立つような作り方をしがちだから。インストありきは考えたことなかったな。
秋山:TAKAHIROが作曲してきたインスト集とか聴いてみたいけどね。
TAKAHIRO:でいうと、俺のおすすめは、GLAYのTAKUROさんが、出したアルバムがあって。ソロで。は、ほぼほぼインスト。TAKUROさんは、ギタリストとして、インストイメージ、インストを中心としたアルバムを作ってて。それはよかった。(中略)でもインスト作れるって、相当な、コードの数とか、洒落た展開の仕方とか、もうとにかくギタリストピアニスト、そういう楽器やってる人たちのほうが、絶対的に強いと。(中略)だからあれかもね、相当楽器のプロ、長年やってる人とかじゃないと、なんかもう、胸張って出せるもんじゃないと思う。インストは。
これはインスト曲に対する会話であり、「YOU are ROCK STAR」はインスト曲ではない。
それでも、TAKAHIROが、「長年やってる相当な楽器のプロ」であり、おそらくは「コードの数とか洒落た展開の仕方とか」を数多く知っているであろうギタリスト、木島靖夫と共作曲という形をとったことは、非常に示唆的だ。
TAKAHIROが自分でコードを書いたとき、それは彼のルーツから、GLAYを思わせるものになる可能性が高い。
しかし、木島靖夫がコードを書いた曲は、きっとそうではない。
木島靖夫がコードを書いたロックンロールは、その上にEXILE TAKAHIROがメロディを乗せ歌詞を書いたロックンロールは、たぶん、EXILE TAKAHIROのロック以外の何物でもなくなる。
TAKAHIROは、2017年に「GLAYみたいな曲を歌いたい」と願い、TAKUROに作曲を依頼した。
今回もまた“GLAY”を目指すのであれば、再びGLAYのメンバーに曲提供を依頼することも、自分で体に染み込んだ気持ちのいいコードを書くことも出来ただろう。
しかし、そうはならなかった。
TAKAHIROは、「YOU are ROCK STAR」については、木島靖夫のコードと共に作曲をすることを選んだ。
それゆえに、私は敢えて断言したい。
「YOU are ROCK STAR」は、EXILE TAKAHIROのロックンロールだ。
ZIGGYのカバー曲を歌い、GLAYらしい曲の提供を受けて歌ったTAKAHIROが、三曲目に繰り出したロックは、“GLAYらしさ”を求めたものではない、木島靖夫という最高のミュージシャンと共に作り上げた“TAKAHIROらしい”ロックだ。
「YOU are ROCK STAR」をGLAYに宛てた楽曲として歌詞を見ると、興味深いのは、その言葉が一方的ではないことである。
お前と生きる未来<ユメ>を
にあらわれるように、対象と共に在り続け、共に走り続けることを、歌詞は歌っている。
TAKAHIROはGLAYのファンであり、GLAYはファンに誠実に寄り添うバンドである。
それを世界で最も知り、信じている人間の中のひとりがTAKAHIROであることは、おそらく間違いのないことであり、これらの歌詞は彼のそういった実感から来ているものかもしれない。
しかし、そう思った時、私は同時に、TAKAHIROがアーティスト、ミュージシャン、ボーカリストでもあることを考える。
EXILE魂に、ドリフェスに、ルナフェスに、EXILEであるTAKAHIROは何度もGLAYと共に歌っている。
そしてACE OF SPADESでは、ロックバンドのフロントマンとしてHISASHIと音を重ね、札幌ファイナルにおいてはTAKURO・TERUともセッションをしている。その時TAKAHIROは、EXILEであり、なおかつバンドマンであった。
TAKAHIROは、GLAYのファンでありながら、GLAYと同じステージに立ち、GLAY×EXILEを、ACE OF SPADESを、「Irish Blue」を、その他の様々な機会を通して、GLAYから直接ロックの、バンドの魂を受け取っているミュージシャンでもある。
つまり——TAKAHIROは、ファンとしては勿論、ミュージシャンとしても、GLAYと同じ道を、未来を、見ていける人間である。
これらの歌詞は、そういった立場にあるTAKAHIROだからこそ叫べる言葉達なのであると、そのように読むのは、思考が滑りすぎかもしれないが。
TAKAHIRO曰く、「YOU are ROCK STAR」は“TAKAHIROのROCK STAR”に宛てた歌だ。
一方で、彼のロックスターに歌いかけるTAKAHIROもまた、ロックスターなのだとここで断言することに、私は全く躊躇しない。
ソロワークを何度も共にしてきた信頼できるパートナー、木島靖夫と作り上げた「YOU are ROCK STAR」は、確かにTAKAHIROをロックスターに押し上げるだけの力を持った楽曲であると、私は思う。
TAKUROは、ACE OF SPADESについて、「スッキリ」内でこう言った。
「これを見て、バンドやりたいと思う子が増えるんじゃないか」(みたいな感じのこと)。
かつてGLAYというバンドに憧れた少年は、今や憧れられる最高のロックバンドのフロントマンでもある。
「YOU are ROCK STAR」。
お前こそがロックスター。
だからやっぱり、歌われているROCK STARは、きっとTAKAHIROのことでもあるのだ。
TAKAHIROがロックスターであり、ロックスターとなったからこそ、彼が“彼のロックスター”に投げかける歌は、同じステージに立ち同じ道を追求する同志から発せられる言葉として、大いなる意味を孕み、輝きを増して我々の耳にも届く。
つまり何が言いたいかっていうと。
「YOU are ROCK STAR」、超格好いいよね。
取り急ぎそんな感じの結論で、ひとつ、どうでしょうか?(?)